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2022.05.02
「あなたへのてがみ」①

令和4年4月16日発行の大分合同新聞にて「ひらけ!里親プロジェクト」の活動の一環として記事を掲載していただきました。

 

本作は、里親制度の実情を伝えるため、制度を活用されている方に取材を行い、実話に基づき制作した手紙の体裁の物語です。

 

 

【記事本文】

育ちゃんへ

看護師の試験、合格おめでとう!育ちゃんの小さい頃からの夢が叶って本当に嬉しいです。優しいあなたは必ずいい看護師になると思います。こちらは元気でやっています。

 

今日は育ちゃんへのお祝いを兼ねて、夜ご飯を唐揚げにしようとお父さんと決めました。もう覚えてないと思うけど、5才の育ちゃんが初めてうちに来た日の夜ご飯も唐揚げでした。

 

幼稚園の年長さんだった育ちゃんは、背中に大きなリュックサックを背負ってうちに来ました。それまでの面談や公園遊びの時は元気だったのですが、いざ宿泊となると、どこかおとなしく、ほとんど喋らなくて、お父さんと少し不安になったのを覚えています。だけど唐揚げが出た途端「からあげ!」と目を輝かせ、おいしいと笑顔で言ってくれました。

 

その日の夜、初めて私たちのことをお父さん、お母さんと呼んでくれたのは本当に嬉しかった。

 

以来、家族にとってここぞという日は唐揚げになりました。育ちゃんも誕生日、運動会、クリスマス、テストでいい点を取った日などなど、私の唐揚げをリクエストしてくれました。

 

中2の時、母の日に私の唐揚げを完コピして作ってくれた時は私の方が嬉しくて涙が出ました。中高の頃は衝突することも度々あったけど、今思えばそれもいい思い出かな。育ちゃんが短大に行ってからも、一緒に過ごした毎日が昨日のことのように思い出されます。

 

うちを出る最後の日、「本当に大変だったよね、ごめんね」と言っていたけど、大変だったぶんだけ、あなたはそれ以上の笑顔と幸せをくれました。こんな手紙を書けることもかけがえのない喜びだし、血が繋がっていなくても私たちは親子です。誇りを持って言えます。

 

何か辛いことがあったら、またうちに来てください。

 

その時は山盛りの唐揚げをつくって待ってます。

 

母より