「ひらけ!里親プロジェクト」の活動の一環として令和4年4月17日から計4回にわたり大分合同新聞にて掲載していただいた「あなたへのてがみ」がこの度第7回大分合同新聞広告賞にて金賞を受賞いたしました。
このような素晴らしい賞をいただきましたこと、chiedsスタッフ一同大変嬉しく思っております。
ご支援くださった日本財団様をはじめ、審査員の皆様並びに制作に携わってくださった各関係者の皆様に心よりお礼申し上げます。
金賞受賞を記念して再度4回に分けて「あなたへのてがみ」を掲載させていただきます。
ぜひご覧ください。
【記事本文】
卓也へ
就職おめでとう。サッカーばかりしていた卓也が新社会人とは、月日が経つのは本当に早いものだな。心から嬉しい。
少しだけ昔話をさせてほしい。君はもう覚えていないかもしれない。10年前のちょうど今頃、4月にしては暑い日に初めて君と出会った。部屋には施設の職員さん2人、そして母さんと私。大人ばかりの中、君は部屋に入ってくるなり早口で挨拶をした。
シャイなのかなと、思った。続いて私たちも挨拶。それで、私は内心焦っていた。何を話そう?話すネタが思い浮かばない。事前に考えておけば良かったと後悔した。職員さんが何か話し出そうとしたその時、君が「プーマや」と言った。私が着ていたTシャツのことだ。
そこから話はとても盛り上がった。サッカーが好きなこと、休み時間にいつもボールを蹴っていること、ディフェンスが得意だけど、本当はフォワードをやりたいことなどなど。あの時のキラキラした目は、今でも思い出すことができる。
中学の試合の時に骨折してしまい、つけていたギプスは、母さんがなぜか捨てられず、実は今も持っている。あっという間にぐんぐん大きくなり成長していく君の抜け殻みたいに思っているのかもしれない。気持ち悪いかもしれないけど宝物だ。
君と私たち夫婦は、縁あってひとつ屋根の下で暮らすことになり、時には感情をぶつけ合うこともあったけど、私は君の父親になれて本当に良かったと思う。
君がウチで暮らした10年間は、サッカーでいうと練習グラウンドみたいなものかもしれない。たくさんぶつかり合いながら、人と人の間のルールや反則を学び、今君は本格的に人生という名のピッチに駆け出そうとしている。あのキラキラした目で、素直に、飾り気なく人と接すれば、きっとうまくいくと信じている。
20才になったら近況報告として一杯やろうじゃないか。
いつでも帰ってきてくれ。
父より
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本作は里親制度の実情を伝えるため、里親さんと里親家庭で暮らすこどもたち、関係機関に取材を行い、実話に基づき制作した手紙の体裁の物語です。